column院長コラム

子宮頸がんで苦しむ女性が一人でも減れば


子宮頸がんは予防できる癌

今回は、子育て中のママのみなさま、特に小学6年生から高校1年生の女の子のお子様をお持ちのママに聞いていただきたいお話です。

前回は子宮頸がん検診のお話でした。病気の早期発見をテーマにしたお話です。早期発見、早期治療はどの病気に関しても大切なことです。
今回はもう一歩進んで、その予防に関するお話です。

がんが予防できる!?そうなんです、子宮頸がんは予防できる癌なのです。
現代はがんがワクチンで予防できる時代なのです。とても画期的なことだと思いませんか?

なぜ予防できるのでしょうか?子宮頸がんになるのはウイルスの感染が原因だからなのです。

子宮頸がんはHPVという名前のウイルスが子宮頚部に感染することで発生します。そのウイルスの感染をワクチンでブロックすることによって癌の発生を防ぐのです。
昨年のノーベル医学生理学賞は日本の山中教授が受賞されました(同じ大学の後輩としてホントにうれしいことでした)。その4年前の2008年のノーベル医学生理学賞はこのHPVが子宮頸がんの原因であることを突き止めたドイツの研究者が受賞しています。なにかすごい感じがしてきませんか?ノーベル賞級のワクチンです。

このHPVというウイルスはありふれたウイルスで女性の80%以上の方が一度は感染するといわれています。これは性交によって感染しますが、通常は自分の免疫力で自然に排除されます。ですが、排除しきれずに5年、10年と感染が続くとがん細胞に変化していくことがあるのです。

HPVは100種類ほどあることが知られています。そのうち10数種類のハイリスクタイプの感染が持続すると子宮頸がんになりやすく、そのなかでも16番と18番のHPVが一番リスクが高いと考えられています。そしてその16番と18番を合わせるとそれだけで70%近くになります。現在発売されているワクチンはこの16番と18番のウイルスの今後の感染をほぼ100%ブロックできます。
ですので、ワクチンの接種によって子宮頸がんになる確率を7割近く下げることが可能になります。またコンピューターのシュミレーション上では効果は20年近く続くと予想されています。

ワクチンの接種時期と費用

ワクチンの接種は若い時期ほど効果が高いと考えられています。一番効果が高くなるのは、性交を経験する前に接種することです。しかし、これまでの臨床試験において45歳まではワクチンの有効性が証明されています。
子育て中のママと、その娘さんがぴったりと適齢ということになります。

そしてこのワクチンが今年度から任意接種から定期接種に格上げされました。つまり、自治体の補助での接種が継続して可能になったのです。
例えば平成25年度の大阪市の対象者は小学6年生から高校1年生(平成9年4月2日から平成14年4月1日生まれ)の女子となっています。そして費用は無料です。(詳しくは各自治体にお問い合わせください。大阪市にお住まいの方はこちらのホームページを参考になさってください。)

前回のコラムに引き続き今回もでました。「無料!」

無料!無料!といってもパパやママが支払った税金から費用が出てるわけですので、正しくは支払った税金を少し取り戻してる感じですけど。
でもそう考えたほうが、受ける気が出てきませんか??

高校2年生以上の女性に関しては実費になります。医療機関によって値段は違いますが、1回16,000円前後で、接種は半年かけて3回する必要があります。詳しくはこのようなサイトを参考になさってください。
また、予防接種の副反応については接種時に担当医によく確認してくださいね。

この子宮頸がん予防ワクチンと、定期的な検診が広く普及することによって、今後子宮頸がんで苦しむ女性が一人でも減れば、産婦人科医として本当にうれしいことです。
そして、ママの力で娘さんを子宮頸がんから守れる時代がきたのです。
母娘でワクチンぜひ受けてくださいね!