生理痛・生理不順
女性が日々の生活の中で感じる不快な症状。
その大半に女性ホルモンが直接的、または間接的に影響しています。
つまり、女性ホルモンの薬によってコントロールできる病気、症状が多いということです。
生理痛、痛いけどがまんしてる
子宮内膜症
生理痛を起こす代表的な疾患です。
女性の7-10%が罹患しているといわれます。年々進行していくことが特徴です。
進行していくと生理の時期以外の痛みを感じたり、性交時や排便時の痛みの原因にもなります。
また不妊症の原因となることもあります。
治療法
①鎮痛剤
軽度の場合はこの方法でもかまいませんが、病気の根本を治療しているわけではありません。つまり進行を止めることはできません。
②低用量ピル
排卵を止めることによって、子宮内膜の成長を抑えます。痛みが軽くなるとともに、生理の量が減る方も多い薬です。病巣を完全になくすことは難しいと考えられています。
③ディナゲスト
卵巣からの女性ホルモン分泌を抑えます。ホルモン分泌はゼロにはなりませんが、基本的には生理はなくなります(不正出血が起きることがあります)。病巣を縮小させる効果も期待できます。
④GnRHa
卵巣からの女性ホルモン分泌を止める薬です。更年期様症状、骨量の減少などの副作用の可能性があり半年の使用に限ります。注射剤と点鼻薬があります。
⑤手術
大きな病変のある場合、薬物治療でも改善しない場合、妊娠の妨げになる場合や、悪性の心配がある場合に考えます。この場合手術可能な病院を紹介させていただきます。
いずれも妊娠の希望の有無によって選択が変わってきます。一番適切で、ベストな方法を一緒に考えていきましょう。
子宮内膜症が存在しない場合
明らかな病変がなくても生理痛が非常に強いことがあります。生理とは妊娠に至らなかった子宮内膜が剥脱する現象です。生理の時には、子宮内膜から、プロスタグランジンという痛みを感じる物質が放出されます。その量や感受性によって痛みの感じ方もひとそれぞれあります。それもホルモン製剤でコントロール可能です。
①鎮痛剤
プロスタグランジンを抑えるタイプが効果的です。
②低用量ピル
子宮内膜の成長を抑えます。それにより、プロスタグランジンの産生を抑えます。劇的によくなる方も多い方法です。
③ミレーナ
子宮内に装着し、持続的に黄体ホルモンを放出する子宮内システムです。
黄体ホルモンは子宮内膜の増殖を抑える働きがあるため、内膜は薄くなり、月経量を減少させるとともに生理痛を軽くします。同時に低用量ピルとほぼ同等の避妊効果を発揮します。
一度挿入すると5年間有効です。
過多月経、生理痛の治療として保険適応がありますので、5年間のコストとしては一番低額になります。
生理の周期がばらばらだけど、大丈夫かしら・・・
排卵が規則正しく起こらないことが原因です。つまり、排卵を起こさせるホルモンが規則正しく分泌されないことが原因です。妊娠を希望されるかどうかで方針が変わってきます。
妊娠を希望されるなら、排卵誘発剤による治療が必要になります。
今すぐの妊娠を希望されないならカウフマン療法や低用量ピルによる生理周期の調整が必要になるでしょう。また漢方薬でゆっくりと調整していくことも選択肢となります。
妊娠を希望されないなら、必ずしも排卵が必要なわけではありません。しかし、排卵している同年代の女性と同じホルモン環境を維持することは必要です。女性ホルモンは生理を起こすためだけにあるのではありません。あなたの体全体をコントロールする重要な要素なのです。女性ホルモンが十分でない状態が長く続くと、骨量が減少したり、さらに卵巣機能が低下したりと、将来のトラブルの原因となっていきます。
将来妊娠を希望されるときが来れば、その時に排卵を起こすような治療法に切り替えていくことになります。
生理前になると、なんか調子悪くなるな・・・
排卵後に卵巣から黄体ホルモンというホルモンが分泌されます。そのホルモンが直接的、間接的に身体やこころに影響をあたえ、さまざまな症状がでます。その症状は200種類以上といわれ、全女性の50-80%が経験すると考えられています。
黄体ホルモンは、妊娠にいたらなければ、排卵から2週間ほどでなくなっていきます。その結果、生理がきます。つまりその症状は生理がくるとともに軽減していくことが特徴です。これが月経前症候群(Premenstrual Syndrome PMS)です。
生理前に始まり、生理とともによくなり、毎周期あらわれる症状。その症状がなんであれ、PMSと考えることが可能です。
精神的に変化があったり、腹痛があったりさまざまです。黄体ホルモンの分泌を抑えることによって、症状を緩和することができます。それにも低用量ピルが有効です。排卵を抑えることによって、黄体ホルモン分泌を抑制し症状を緩和していきます。
【漢方による月経前症候群(PMS)の緩和】
またホルモン分泌はそのままに、症状を緩和する方法として漢方薬も有効です。加味逍遥散や温経湯などを用います。
生理周期の後半のみの使用でも効果があることもあります。その他抗うつ薬を周期の後半のみに使う方法もあります。 様々な症状と、一人一人の個性に応じて最適な治療法を提案してまいります。
避妊が心配だなぁ・・・
長い人生の中で、妊娠を希望されない時間が長くなってきているのが、現代を生きる女性の特徴です。確実で安全な避妊方法を選択してください。現時点では低用量ピルによる避妊がその条件に一番あてはまります。
「ホルモンって体に悪い?」「お母さんがホルモン剤は飲むなって」
ホルモン剤に対する誤解はとても広くあるようです。もちろん薬ですので副作用はあります。しかしメリットとデメリットを天秤にかけて考えたとき、圧倒的にメリットが大きいのが低用量ピルという薬なのです。
以前はホルモンの含有量が多かったために、副作用がでることもありました。年齢が上の世代ではそのイメージが強いのかもしれません。現在では、効果はそのままに、よりホルモン含有量を減らした製剤が中心です。
メリット
- 自分主導で確実な避妊ができる
- 飲み忘れがなければ、その効果はほぼ100%
- 生理周期のコントロールも容易に可能
- 多くの副効用・生理痛の軽減・過多月経の減少・周期が安定・ニキビが減る・PMSの改善・ 卵巣がん、子宮体がん、大腸がんの発生が減少
デメリット
- 性感染症は防げない
- 子宮頸癌の発生がごくわずかに増加
- 副作用・吐き気・頭痛・倦怠感・血栓症など
おりものの異常
「おりものが多い」「かゆみがある」などの症状は多くの方が経験されたことがあると思います。おりものが増える原因は様々ですし、その対処法も様々です。
症状さえなければ問題にならないものから、症状がなくてもきちんと治療すべきもの、そのままでも問題はないけれど、症状だけはなんとかしたい。などなど・・・
おりものの異常は大きく分けて以下のような原因が考えられます
1. 子宮からの分泌液が増えている場合
排卵の時期には子宮頸管(子宮の入り口の部分です)から頸管粘液の分泌が増えます。
妊娠にむけて、精子が子宮頸管を通過しやすくするためです。これは正常の現象です。その分泌液の量には個人差があります。その量が多い方はおりものが増えてきたと感じることと思います。これだけだと全く治療の必要がありません。
「今は妊娠の希望がないし、なんとかならないかな?」
そのような場合は、避妊もかねて、ピルの使用をおすすめします。
排卵を抑制することによって、排卵期の頸管粘液の分泌も抑制します。
2. 膣の中の常在菌の量が普段より増えたり、バランスを崩している場合
膣の中にはもともと、常在菌である乳酸桿菌など多くの種類の菌が存在し、その菌種間で平衡関係が保たれています。このような菌をまとめて正常細菌叢と呼びます。決して無菌状態ではありません。
たとえば、乳酸桿菌は膣の上皮細胞に含まれるグリコーゲンを分解し、膣内を酸性に保ち外部からの病原菌の侵入を防いでくれます。このように、正常細菌叢は生体防御の役割を果たしています。
また逆に何らかの原因で菌の間の平衡関係がくずれると、いろいろな問題を起こします。
おりものが増えたり、においが気になったり、かゆみを感じたりします。極端に免疫力が低下した状態なら、腹腔内感染の原因になることもあるぐらいです。
体調を崩したり、生理の前だったり、少しのきっかけで起きることがあります。
ですので、対処法として体調を整えることが大切です。そして局所的には洗浄と膣内の抗生剤や抗真菌剤投与が有効です。
生理前になると毎回症状がある方もおられます。その場合、ピルの服用によってホルモンの分泌をコントロールすることも一つの対応策になることもあります。
「体調を整える」ことは口で言うのは簡単ですが、実際は難しいですよね。ストレスを感じずに、早寝早起きが毎日できればいいのですが・・・
3. 腸の中や、皮膚の表面などにいる常在菌が膣のなかで増えている場合
菌の種類は異なってきますが、基本的には2と同じ状態です。この場合も洗浄と膣内の抗生剤投与が基本です。
中に、B群連鎖球菌という菌がいます。多くの人が持っているありふれた菌です。通常は問題ありませんが、妊娠されてる場合には注意が必要です。まれに新生児に重篤な感染症を引き起こすことがあり、分娩時に抗生物質を使って対応します。
検査結果で上記の菌が検出されても、症状がなければ必ずしも治療が必要なわけではありません。症状があるなら上記のような対応をしていきます。
検査結果に異常がなくても症状が続くときもあります。その場合は、よく相談して方針を決めていくことになります。
4. 性病の感染がある場合
代表的な性感染症に、クラミジア、淋菌、トリコモナスなどがあります。クラミジア、淋菌は症状がないことも多い菌です。
クラミジアは今一番多い性感染症です。放置しておくと、腹腔内感染や将来の不妊症の原因になることもあり、必ず治療すべき疾患です。また、性感染症はパートナーの方も同時に検査、治療が必要です。そうでないと、せっかく治療してもまた同じ菌に感染してしまいます。「ピンポン感染」などと呼ばれる状態で、二人の間を菌が行ったりきたりしてしまい、カップルとしてなかなか完治することがありません。
淋菌は昔から知られている性感染症です。男性は感染の2〜7日の潜伏期間をへて症状が出現します。激しい症状になることも多いです。女性の場合は数週間から数か月症状が出ないこともあります。出たとしても軽い症状であることも多いです。
最近の傾向として耐性菌が増えてきています。効かない抗生剤が増えてきているのです。飲み薬だけでは効果なく、筋肉注射が必要な場合もあります。
トリコモナスは細菌でなく単細胞の原虫の仲間です。男性は症状が出ないことも多くあります。女性の場合、匂いのある黄緑色の泡立ったおりものが増えてきます。性交時や排尿時の不快感や、外陰部のかゆみ、痛みなどが出てきます。膣剤や内服薬で治療します。この内服薬はアルコール分解を阻害しますので、飲酒すると悪酔いやアルコール中毒様の症状を引き起こすことがありますので、禁酒が必要になります。
性感染症
性感染症全体について言えるのは、予防はコンドームが必要です。そしてカップルのどちらかに感染があるなら、同時にパートナーの検査、治療が必要です。カップルが同時に治療し、治癒が確認できるまでは性交すべきではありません。
そして、治療終了後治ったかどうかを確認する再検査が必要です。
性感染症はとてもデリケートな問題を起こします。「誰からもらった?」「どっちが悪い」などなど。実際問題として、感染の時期はなかなか特定することはできませんので、今の二人、これからの二人のために一緒に治療することが大切になります。
妊婦健診
当院は夜間、休日の緊急の対応ができません。ですので、当院で妊婦健診を受けていただける方は、分娩する病院が確定しており、夜間、休日の対応をその病院でしていただける方に限ります。現時点で淀川キリスト教病院・愛仁会 千船病院・愛染橋病院と提携しておりますので、その3病院で分娩予定の方は妊婦健診をお受けすることが可能です。
また、他の分娩予定先の病院にて同様の確認が取れた場合も妊婦健診をお受けすることが可能です。
妊娠の初期に一度分娩予定病院を受診していただき、分娩予約をお取りいただきます。
当院での健診は妊娠32週までとさせていただきます。
また遠方への里帰り分娩予定の方もお受けできません。
ご不便をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。現在症状のない方が対象になります。問診中に問題が発見された場合は保険診療に切り替わる場合がありますので、保険証をご持参ください。
子宮、卵巣の腫瘍性病変
代表的なものに子宮筋腫、子宮腺筋症、卵巣良性腫瘍、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌等があります。
超音波やMRIによる診断を行います。そのうえで外来での治療が可能か、手術が必要かの判断をいたします。
手術が必要な場合は提携病院に紹介させていただきます。
近年では内視鏡手術が主流となり、ロボット手術の導入も進んでまいりました。最先端の手術を行っている病院を中心に紹介させていただいています。
婦人科ドック ブライダルチェック
婦人科検診は病気の早期発見にとても重要な役割をはたします。婦人科疾患は症状がなくても潜んでいる場合があり、検診によって早期発見、早期治療が可能になります。
現在症状のない方が対象になります。問診中に問題が発見された場合は保険診療に切り替わる場合がありますので、保険証をご持参ください。