検査では異常がないのにデリケートゾーンや排尿時の不快感が続く場合、その原因不明の不調の裏には、通常の検査では見逃されているウレアプラズマが潜んでいる可能性があります。
さらに通常の検査では発見できないため、綿棒や尿を使った特殊な遺伝子検査が必要です。
本記事ではデリケートゾーンの不快感を引き起こす原因の1つである、ウレアプラズマ感染に関して、正しい知識をやさしく伝えます。
- ウレアプラズマ感染は慢性的なデリケートゾーンの不快感に関連する可能性がある
- ウレアプラズマは、おりものの変化や排尿時の軽い痛み、膣のムズムズ感や違和感といった症状の原因になり得る
- ウレアプラズマは、性行為やオーラルセックスにより感染する
- ウレアプラズマは主に性器感染を起こすが、マイコプラズマには肺炎を起こす種類も存在する
- 一般的な細菌検査では検出が難しく、PCRなどの専門的な遺伝子検査で発見できる場合がある
- ウレアプラズマに感染した場合は、抗菌薬などの抗生物質による治療が基本となる
軽い下腹部の不快感やおりものの変化に悩む人や、パートナーがウレアプラズマ陽性と判明した人は、必ず以下の記事を読んで適切に対応しましょう。
デリケートゾーンの不調はウレアプラズマが原因の可能性がある
ウレアプラズマは慢性的なデリケートゾーンの不快感、おりものの変化などを引き起こす可能性がある細菌です。
そのため一般的な細菌性膣炎やカンジダ、クラミジアや淋菌などが陰性でも、ウレアプラズマが隠れている可能性があると認識しておく必要があります。
検査はPCRという遺伝子検査によって見つかる場合があるため、長引く違和感に悩む場合は身体の声を無視せず、専門医に相談しましょう。
特に陰部の慢性的な痒みやヒリヒリ感、おりものの異常などがある人は、原因がわかると不安から抜け出して正しい治療を受けられます。

ウレアプラズマが女性の身体で引き起こす症状には陰部の不快感などがある
ウレアプラズマは子宮や尿道といったデリケートな部分に潜む小さな菌で、おりものの変化や排尿時の軽い痛み、膣のムズムズ感や違和感といった症状が現れる場合があります。
通常無害であるものの、体調や免疫バランスの乱れなどをきっかけに増殖すると、軽い炎症や不快感を引き起こします。
ウレアプラズマで見られる主な症状を、以下にまとめました。
- おりものの量や臭いの変化
- 排尿時の軽い痛みやしみる感覚
- 膣や陰部のムズムズ感や違和感
- 軽い下腹部の不快感
これらの症状はいずれも、疲れやホルモンバランスの乱れ、クラミジアや細菌性膣炎など他の性感染症でも起こり得るため区別が難しいです。
さらに感染しても強い症状が出ない場合も多く、気付くのが遅れがちであるため、症状が軽くても気になる場合はPCR検査を行う医療機関で相談してください。
参考:非クラミジア性非淋菌性尿道炎 - jssti
非クラミジア性非淋菌性尿道炎 (ひくらみじあせいひりんきんせいにょうどうえん)とは | 済生会
Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021 - PMC
ウレアプラズマは性行為により感染する小さな細菌である
ウレアプラズマはマイコプラズマに近い非常に小さな細菌で、性行為やオーラルセックスにより感染します。
普通の細菌と違って細胞壁という細胞の壁がないため、一般的な抗生物質は効きません。
先述した通り健康時は体内にウレアプラズマが存在しても問題ない一方で、以下の状況では細菌数が増えて炎症を引き起こします。
- 免疫力が落ちた時
- パートナーとの感染をくり返した時
- 膣内の菌のバランスが崩れた時
条件が重なるとデリケートゾーンの不快感といった症状を引き起こす可能性があるため、医師の判断に基づく正しい診断と適切な治療、再感染の予防が重要です。
参考:Mycoplasmas and Ureaplasmas as Neonatal Pathogens - PMC
Infections Due to Species of Mycoplasma and Ureaplasma: An Update | Clinical Infectious Diseases | Oxford Academic
Mycoplasma pneumoniae and Its Role as a Human Pathogen - PMC
ウレアプラズマとマイコプラズマの違いは症状や治療法にある

ウレアプラズマとマイコプラズマはどちらも通常の細菌よりも非常に小さく、細胞壁をもたない非典型菌と呼ばれる細菌であるものの、性器や呼吸器に感染した時の影響や治療法が異なります。
症状としては、ウレアプラズマは無症状や軽い症状のものが、マイコプラズマは症状が強く出るものが多いです。
そして、抗菌薬は両者とも細胞壁を持たないため、ペニシリンなどのβラクタム系抗生物質では効果がありません。
参考:2021 European guideline on the management of Mycoplasma genitalium infections - Jensen - 2022 - Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology - Wiley Online Library
Molecular Biology and Pathogenicity of Mycoplasmas - PMC
Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021
ウレアプラズマの特定には遺伝子検査などの専門的な検査が必要
ウレアプラズマは細菌が非常に小さく、一般的な細菌検査では検出が難しいため、PCRなどの専門的な遺伝子検査で検出される場合があります。
PCR検査の流れを以下にまとめたため、受診前に確認して心構えしておきましょう。
- 女性は膣の分泌物や子宮の粘液を専用の綿棒で採取し、男性は尿道の分泌物もしくは最初に出る尿を採取する
- 採取した検体から、ウレアプラズマのDNAを取り出す
- PCRという方法で、ウレアプラズマ特有のDNAを何百万倍にも増やす
- PCR装置でDNAが確認されると陽性、見つからなかった場合は陰性となる
通常検体の採取は痛みを伴わずに数分で終わり、1〜3日ほどで結果が出ます。
長引く陰部の違和感や原因不明の不調がある場合、このような遺伝子レベルの検査が、隠れた原因を見つける可能性があります。
参考:PCR実験の手引き
ウレアプラズマ感染の抗生物質治療や再発予防は医師判断の下行う
ウレアプラズマに感染した場合は、医師が必要と判断した場合に限り、抗菌薬などの抗生物質による治療が実施されます。
ウレアプラズマは普通の細菌と違い細胞壁を持たないため、ペニシリン系やセフェム系などの一般的な抗生物質は効きません。
そのため、マクロライド系のアジスロマイシンやニューキノロン系のレボフロキサシンが中心に使われます。
以下では、アジスロマイシンとレボフロキサシンの使用方法や特徴を簡単にまとめました。
| 薬剤 | 薬の分類 | 使用方法 | 主な副作用 | その他の留意点 |
|---|---|---|---|---|
| アジスロマイシン | マクロライド系抗菌薬 | 1日1回の経口投与か、注射剤による治療を行った後に1日1回の経口投与 | 下痢や腹痛、吐き気や肝機能障害など | 自動車の運転など、危険を伴う機械を操作をする際は気を付ける |
| レボフロキサシン | ニューキノロン系抗菌薬 | 基本的に1日1回の経口投与 | 吐き気や下痢、頭痛やめまいなど | 自動車の運転など、危険を伴う機械を操作をする際は気を付ける |
どちらを使うかは、感染の重症度やこれまでの病歴、耐性菌の有無などで医師が判断します。

そしてウレアプラズマは性的接触によって再感染する場合があるため、自分だけでなく、パートナーも同時に治療を受けるのが重要です。
参考:医療用医薬品 : アジスロマイシン (アジスロマイシン錠250mg「サワイ」)
医療用医薬品 : ジスロマック (ジスロマック点滴静注用500mg)
医療用医薬品 : レボフロキサシン (レボフロキサシン錠250mg「サワイ」 他)
女性は症状が軽く気付かない場合もあるため早めの相談が大切
女性の場合、ウレアプラズマなどの感染があっても症状がとても軽かったり、ほとんど自覚がないまま経過したりするケースがあります。
さらにおりものの変化や排尿時の軽いしみる感じ、膣のムズムズ感などは体調の変化や他の原因でも起こり得るため、つい様子を見がちです。
しかし、気になる違和感が続く場合やなんとなく普段と違うと感じる時は、早めに医療機関へ相談しましょう。
専門の検査で原因がはっきりすると、適切な対処につながり、不安も少しずつ和らぎます。
気負わず、デリケートゾーンの不快感を解消するためにも、身体のサインにやさしく耳を傾けてみてください。
正しい知識で不安を解消し健康的な日々を取り戻しましょう!

検査では異常なしと診断された場合でも、長引く不快感や原因不明の症状に悩んでいる時は、自分の身体のサインを見逃さないのが大切です。
PCR検査などの専門的な検査で原因を突き止められる場合もあり、適切な抗生物質投与で早めに対処できると、デリケートゾーンの不快感を改善するきっかけになります。
さらに感染を繰り返さないためには、パートナーと共に治療を受ける行動が欠かせません。
正しい知識を持って不安を手放し、心身ともに健やかな日々を取り戻しましょう。



