淋病は淋菌と呼ばれる病原菌が原因で起こる性感染症で、患者の多くは20〜30代の男女です。
性行為や性交類似行為が原因で感染し、気がつかないまま放置した場合は子宮外妊娠や母子感染の原因となります。
近年では抗生剤に耐性を持った淋菌も現れはじめており、治療が難しくなるケースも少なくありません。
本記事では女性に起こる淋菌の症状や治療法、感染を防ぐ方法について解説します。
淋菌に感染した場合に起こりうる初期症状や身体の変化を知っておくだけで、症状の有無を自分で察知できるため早期治療が可能となるでしょう。
- 淋病の感染経路と予防方法がわかる
- 淋病に感染した場合に起こりうる初期症状と検査方法
- 淋病は抗生剤で治療が可能な感染症
- 妊娠している場合は母子感染のリスクがある
- 女性が淋病を予防するために行うべき対策
健やかな生活を送るためには、淋病に関する正しい知識や予防法をしっかりと理解して自分の身体を守るのが大切です。
淋病は20〜30歳代の男女に多く早期発見が大切な性感染症

淋病は20〜30代の男女に多いとされていますが、男女比を比較すると男性患者数の割合が多い感染症です。
主な感染経路は性行為や性交類似行為で、感染したパートナーの粘膜や唾液などの分泌物と自分の粘膜の接触で感染します。
感染すると2〜9日間の潜伏期間を経て発症しますが、男性は尿道に強い痛みが出るため比較的早いタイミングで受診するケースが目立ちます。
一方女性は無症状のまま感染が進行する例も多く、ある程度進行してから発見されるケースが多いのが特徴です。
さらに淋病は放置しておくと女性自身の身体にも影響を及ぼし、骨盤内炎症性疾患や子宮外妊娠、卵管性不妊の原因となります。
淋病は基本的に抗生剤の使用で完治しますが、重症化すると敗血症や腹膜炎に発展するケースもあります。
場合によっては全身の集中治療が必要となるため、感染予防はもちろん症状を自覚した時点で医療機関を受診するのが大切です。
淋病の感染経路は性行為だけではない
淋菌はヒトからヒトへは感染しますが、動物など人間以外の生物からは感染しない病原菌です。
主な感染経路である性行為や性交類似行為では、感染者の粘膜や体液と自分の粘膜や皮膚にある傷口との接触で感染します。
たとえパートナーが非感染者でも、感染者自身が不特定多数の人と関係を持っていた場合、感染経路が分からないケースもあります。
さらに淋菌に感染する機会は性行為などのほかにも存在するため、心当たりがなく感染経路が分からない人もいるでしょう。

性行為以外の感染経路としては、注射針の使い回しや感染者の体液が付着したタオルの使用などがあります。
友人同士でピアスを開けたり、衛生管理が徹底されていない場所でタトゥーを掘ったりした場合、針の使い回しが原因で感染します。
特に免疫に異常がある人や抗がん剤の治療を受けたばかりの人は、日常のあらゆるものが感染源となるでしょう。
新生児が感染した場合、淋病になったと気づかずに出産を迎えた母親が感染源となります。
淋病には母子感染という感染経路があり、胎児が産道を通過する際に母親の子宮頸管や膣に付着した淋菌に感染します。
そうなると性行為で感染するという淋病の特性から、母親のパートナーも必然的に淋病に罹っていないか検査が必要です。
このように淋病は性行為以外の感染源も存在するため、毎日の手洗いうがいも基本的な感染予防策となります。
赤ちゃんへの感染を防ぐには、妊娠を希望した段階でパートナーと一緒に性病検査を実施するのが推奨されています。
淋病の予防は基本的な感染対策を行うのが大切
淋病の予防は毎日の手洗いうがい、性行為や性交類似行為で避妊具を使用するのが基本です。
淋病は膣や陰茎の粘膜だけでなく、直腸や目の粘膜、口腔内の粘膜からも感染します。
特に感染の大きな原因と考えられる性交渉や性交類似行為の際の予防は、避妊具の装着が大切なポイントです。
性交渉や性交類似行為で感染する場合、ほんの少し接触するだけでも感染者の粘膜から非感染者の粘膜へ病原菌がうつります。
そのためどちらか一方の性器にコンドームなどの避妊具を装着して、相手の性器と自分の性器や口腔粘膜の接触を防ぐ必要があります。
ただし避妊具でも予防できる範囲は限られており、完全に予防できないのが現状です。
特に相手の口腔粘膜と接触するようなスキンシップをする場合、事前に相手が淋菌に感染していないか検査する以外の予防法がありません。
たとえディープキスなどの直接的な接触がなくても、間接的に相手の粘膜に付着した菌が自分にうつるときもあります。
本来、淋菌は高温や低温の環境では生存できませんが、人肌程度の温度では粘膜を離れてから数時間の生存は可能です。
そのため淋菌に感染した人が使用したストローをそのまま口に含んだ場合、菌が生存していると口腔内や咽頭の粘膜に感染します。
ほかにも感染した人が使用したタオルやピアスの穴あけなどの使い回しによる感染は、予防するにも限界があります。
このように日常生活で起こりうる感染を防ぐには、適切な場面で手洗いうがい、こまめな洗濯が大切です。
淋菌は基本的に温度が変化する環境では生存できませんが、ほかにも消毒剤や日光、乾燥で簡単に死滅します。
性行為などでパートナーと触れ合った場合は、石鹸や消毒液を用いたり洗濯物には乾燥機を使用したりして淋菌を殺菌させるとよいでしょう。

女性が淋菌に感染すると症状は徐々に進行する
女性が淋菌に感染すると小さな身体の変化から始まり、進行するに連れて症状は深刻化していきます。
女性は男性と異なり自覚症状が少ない背景から感染に気づかず、重症化してから症状を自覚する人も少なくありません。
淋病が進行すると子宮頸管炎や肝周囲炎、さらには菌血症から播種性淋菌感染症に発展する可能性があります。
播種性淋菌感染症とは、血液中に侵入した淋菌が全身に及んで皮膚や関節などのいたるところで炎症を起こす疾患のことです。
早期発見の鍵となる初期症状は、身体に何らかの異変が無い場合でもセルフチェックによって気づくものもあります。
淋病に特徴的な身体の変化や観察するポイントを押さえ、「感染かも」と思ったときに受診できるような知識を身につけておきましょう。
淋菌感染症の初期症状はおりもの変化である場合が多い
はじめに膣の粘膜に付着した淋菌は子宮頸管や膣炎、バルトリン腺に広がってゆき、そこで炎症を起こします。
淋菌やクラミジアが膣から子宮頸管に上って炎症を起こした状態が、子宮頸管炎や膣炎、バルトリン腺炎です。
バルトリン腺は膣の入り口付近にある分泌液を出す働きをする部分で、そこに淋菌が付着すると炎症が起こります。
これらの病態の初期症状には個人差があり、無症状の人や下腹部痛や性交時の痛みで病院を受診する人もいます。
症状がない場合でもセルフチェックとして、自分の身体と向き合うのが大切です。

下腹部痛や性交痛が無いケースでも炎症で外観が変化していたりおりものの性状が変化していたりする場合も少なくありません。
子宮頸管炎や膣炎の症状
子宮頸管炎や膣炎の症状は、以下の通りです。
- おりものの変化
- 下腹部痛
- 性交痛
- 外陰部の痒み
- 外陰部の腫れや痛み
- 不正性器出血
- 悪寒や発熱
なかでもおりものはセルフチェックで変化を察知できる一方、痛みや発熱といった症状は伴いません。
そのため日常的におりものの状態を観察したり月経周期を把握したりして、正常なおりものを理解しておくのが大切です。
おりものは月経周期や妊娠の時期によって分泌量が異なり、排卵期や妊娠初期にはサラサラとしたおりものが多量に分泌されます。
月経直前や妊娠初期のおりものはにおいが強い場合がありますが、酸っぱいようなにおいは正常な反応です。
それに対して淋病になった際に身体から出るおりものは、色調やにおいが正常のものと異なります。
淋病になると菌を殺すために働いた白血球の死骸や膿が含まれるため、黄色や緑色のドロドロした膿のようなおりものが分泌されます。
不快感を覚えるような悪臭を伴ったり、血が混ざったようなおりものが分泌されたりするのが淋病のおりものの特徴です。
膣炎になった場合は、おりものの変化に加えて外陰部の発赤や腫れ、痒みを伴うケースもあります。
そして子宮頸管炎と膣炎に共通した症状が、下腹部痛や性交痛、不正性器出血です。
淋菌による炎症が膣内や子宮頸管に炎症が広がっている場合は、下腹部痛や性交痛があるほか内診時には痛みを伴います。
特に下腹部痛や性交痛は痛みの程度に個人差があり、違和感を覚える程度の人から立っていられないほど強い痛みを感じるケースまであります。
治療せずにいると時間が経つにつれて徐々に炎症が悪化して、発熱や悪寒といった全身症状が出現するようになるでしょう。
全身の症状は感染症が進行したサインとして捉えられるため、おりものの変化など局所的な症状で留まっているうちに医療機関を受診するよう心がけてください。
バルトリン腺炎の症状
膣に付着した淋菌が、膣付近のバルトリン腺で炎症を起こすケースも見られます。
バルトリン腺は膣の近くにある器官で、性的興奮時に膣内を粘液で潤す役割があります。
淋菌によってバルトリン腺に炎症が起こった際の症状は、炎症部位の腫れや疼痛、赤く腫れて熱をもつのが特徴です。
腫れの程度は小さく腫れたままで済むものから、尿道を圧迫するほど酷くなるケースまで個人差があります。
尿道を圧迫されるほど腫れが酷くなると、一回で排泄される尿量が減って残尿感や下腹部痛といった膀胱炎症状が現れます。
そのため、膀胱炎と勘違いして泌尿器科を受診する人も少なくありません。
しかしバルトリン腺炎に気付かないほど軽度なものと、症状が進行するにつれて膿が溜まって膿瘍ができるケースもあります。
膿瘍の形成や腫れが大きくなった際には、一定期間入院して抗生剤を点滴する必要が出てきます。
早い段階でバルトリン腺炎に気づくには、日頃から性器の状態を確認して赤く腫れたり熱を持ったりしていないか確認するとよいでしょう。
心配な場合は医療機関に相談してみるほかに、自宅でできる検査キットを使用してみるのもひとつの方法です。
感染が進むと命に関わるケースもある

淋病は自覚症状を感じないまま、子宮などの生殖器以外の臓器に感染が広がると命に関わるケースがあります。
淋菌は性器クラミジアと同様に膣や子宮から卵管へと広がり、そこから肝臓や全身に拡大するのが特徴です。
淋病によって引き起こされる骨盤内炎症性疾患は、卵管炎や卵巣炎といった骨盤内の器官に炎症が起こります。
そして淋菌が血液中に侵入して全身に感染が広まると、播種性淋菌感染症に発展します。
骨盤内炎症性疾患で起こる症状
骨盤内炎症性疾患は、骨盤内にある卵管や卵巣に淋菌感染が広まり炎症を起こした状態です。
卵管や卵巣で炎症が起こると、以下のような症状が起こります。
- おりものの増加
- 下腹部痛
- 悪寒や発熱
- 性交時の痛み
- 吐き気や嘔吐
上記に示した症状の多くが子宮頸管炎や膣炎と同様の症状ですが、淋菌に感染していなくても月経前に同じような症状が出る場合があります。
そのため月経前によるものと勘違いするケースがありますが、卵管炎や卵巣炎では月経が終了しても症状が続くのが特徴です。
ほかにも生殖器で炎症が起きているときのおりものは、異臭がしたり普段とは違う色をしていたりします。
このようにおりものの変化を観察するのも、早期発見への近道となるでしょう。
播種性淋菌感染症に関連する症状
播種性淋菌感染症は、血液中に侵入した淋菌が血流に乗って全身に回り感染症を広めていく状態です。
播種性淋菌感染症になると、以下のような病気を発症します。
- 膿疱性皮膚病変
- 淋菌性関節炎
- 心筋炎
- 肝周囲炎
- 髄膜炎
膿疱性皮膚病変は、腕や足を中心とする全身の皮膚にニキビのようなものができる皮膚病です。
そして淋菌性関節炎は、四肢を中心に手足の関節で炎症が起こり、腕や足の関節に移動するような痛みが生じます。
ほかにも上記に示した病気は、全身の炎症による発熱や悪寒、倦怠感や局所の痛みです。
心筋炎や肝周囲炎といった臓器そのものが炎症を起こした場合、それぞれの臓器障害による特徴的な症状が現れます。
心筋炎では息切れや浮腫みといった心不全症状、髄膜炎では異常行動、肝周囲炎では黄疸などが目立つようになるでしょう。
こうした症状が出るまで病状が深刻化すると、局所的な治療に加えて集中的な全身管理も必要です。
これらの病気はいずれにしても命を落とす危険性があるため、身体に異変を感じた際はすぐに医療機関を受診してください。
淋菌感染症は無症状のまま経過するケースもある

無症状が理由で淋菌への感染に気づかず治療をしていない女性は、約半数以上いるといわれています。
淋病への感染に気付かぬまま過ごした結果、さまざまな接触方法を通じてパートナーや第三者に感染を広めるリスクがあります。
特に影響が大きいのは、淋菌への感染に気づかず妊娠した結果起こる胎児への母子感染です。
胎児期の母子感染は流産や早産に発展するリスクが潜んでおり、妊娠中に除菌しても完全に母子感染を予防できるわけではありません。
無事に出産を迎えても胎児が産道を通過する際、わずかに残っていた淋菌が感染の原因となるケースもあります。
新生児の淋菌感染症は結膜炎や肺炎を発症するケースが多く、残念ながら命を落としてしまう赤ちゃんもいます。
このように淋菌は、無症状のまま放置しておくと自分の大切な人にも影響を及ぼす病気です。
日常的に経口避妊薬を服用している人でも、淋菌による母子感染などを予防するために避妊具の装着などの予防を心がけてください。
女性があらかじめ知っておきたい淋病の予防策
自分自身が淋病に罹らないようにするだけでなく他者への感染を防ぐには、あらかじめ予防策を知っておくのが重要です。
男女とも性行為による淋病の感染を防ぐには避妊具の使用がよいと理解していますが、避妊具だけでは予防に限界があります。
淋病は日常生活のあらゆるところに感染リスクが存在するため、どのような状況で生存する病原菌なのか知っておくのが大切です。
淋菌の殺菌方法や衣類などの取り扱い、疑わしいときにはどう対応したら良いのか知ると感染のリスクから自分を守りましょう。
避妊具は正しい使い方を守って使用する
性感染症を予防するうえで大切なのが、避妊具を正しく、適切なタイミングで使いこなす点です。
性行為で使う避妊具として代表的なコンドームは、誤った方法で使用すると予防の意味がありません。
コンドームを使う場合は、以下のポイントを確認して適切に使用してください。
- 常温で保存されているか
- 挿入前あるいはオーラルセックスの前に着用しているか
- 使用期限内の製品か
- コンドームに破損がないか
- 適正なサイズを着用できているか
これらのポイントは、使用前にあらかじめ確認しておくのが大切です。
男性が装着するものだからとパートナーを信頼しきるのではなく、女性側でもしっかりと確認する必要があります。
そして着用する場合は挿入前に限らず、オーラルセックスの前にも正しい方法で着用してください。
オーラルセックスのあと同じコンドームを付けたまま性器に挿入する人もいますが、その方法ではかえって感染を招きます。
オーラルセックスをしたあとは、新しいコンドームに取り替えてから挿入するよう心がけてください。

射精後はすぐにコンドームを外して破棄しますが、体液は性感染症のほかにも様々な菌が付着しているケースもあります。
周囲に感染させないためにもコンドームを固結びするなどして、周囲に体液が飛散しないように処理しましょう。
このように避妊具を正しく着用し、適切なタイミングで使用するだけでも淋菌への感染リスクは格段と減少します。
ただし、コンドームを着用したとはいえ完璧に淋病を予防できるのではないと理解しておいてください。
不特定多数の人と関係を持たないようにする
淋菌を含む性感染症の要因となるのが、パートナーを除く不特定多数との性交渉です。
最近では風俗店だけでなく、SNSなどを利用して不特定多数の異性と関係を持つ人が増えています。
しかしその時だけ関係した相手が、必ずしも全ての性感染症に罹患していないとは限りません。
そのため関係を持った相手の数が増えるにしたがって、性病に罹患するリスクも増えていきます。
パートナーと一緒に定期的な性病検査を受ける
性感染症に罹患しないようにするには、定期的に性病検査を受けるのが大切です。
性感染症は性行為だけが感染元となるわけでなく、海水浴場を利用したりタトゥーを掘ったりするのも感染源になります。
このように性感染症の罹患リスクは日常のなかに潜んでおり、明確な感染原を特定できないケースも少なくありません。
定期的に性感染症に関する検査を受けると、早期に発見できるうえに早く治療にたどり着けるでしょう。
淋菌をはじめとする性感染症の早期治療は、将来的な不妊リスクを低下させる観点からも重要なポイントです。
デリケートな話題として認識されている性感染症の話題は、若い世代を中心に男女間では敬遠する人もいます。
しかし近年では匿名性を保ったまま検査できるだけでなく、自宅に検査キットを取り寄せてセルフチェックするのも可能です。
自分の生活状況や価値観に見合った検査方法を探し、パートナーと一緒に検査を実施して淋病の予防に努めましょう。
タオルなどの日用品は淋菌の特性を知って正しく処理する

ほかの人が用いたタオルなどの日用品に触れたあとは、石鹸を用いた手洗いや洗濯、充分な乾燥も感染予防のポイントです。
淋菌は人間の粘膜以外の環境では長く生存できない特性を持っており、乾燥している場所や急な温度変化、消毒液で簡単に死滅します。
公衆浴場や公衆トイレを使用したり、他人にハンカチを貸したりした場合には、洗濯や手指消毒をするのも大切です。
抗がん剤治療などで通常より免疫力が低下している場合は、日常的な手洗いうがいを心がけて、清潔なハンカチや手指消毒液を持ち歩くとよいでしょう。
淋病は培養検査の結果に基づいて診断される
淋病を診断する際には尿やぬぐい液などに菌が存在するかどうかを調べ、結果が陽性の場合は淋病と診断されます。
正しく診断するには医療機関で適切な検査を受けるのが確実ですが、さまざまな理由から医療機関を受診できずにいる人もいます。
デリケートな問題である性感染症は人に知られたくなかったり、羞恥心から受診する勇気が出なかったりする人もいるでしょう。
その場合、淋菌は性器だけではなく咽頭や直腸など身体のいたるところに感染するため、感染部位に適した検査キットを選択する必要があります。
淋菌を診断するには自分に見合った検査を選択するのがポイント
いち早く淋病を発見して早期治療にたどり着くには、複数ある検査方法の特徴を把握し、自分の身体に見合った方法を選択するのが大切です。
検査は大きく分けて即日検査とPCR検査の2種類あり、そこからさらに症状の有無や程度、部位によって検査方法が細かく分かれます。
そして淋病は感染から2〜7日程度は潜伏期間といわれ、その期間に該当する人の多くは自覚症状がありません。
淋病を自分で検査する場合は、症状の有無だけでなくどこに症状が出ているのか、潜伏期間に該当しないかの確認が必要です。
選択した検査方法によっては結果が出るまで数日かかるケースがあるのに加え、検査方法を誤ると誤判定となるリスクもあります。
セルフチェックが不安な人は保健所で検査する方法や医療機関を受診する選択肢もあるため、自分に適した方法を選択しましょう。

淋菌即日検査とは
淋病即日検査は尿や膣から採取したぬぐい液などを用いて、簡易的に検査する方法です。
結果が出るまでは15〜30分程度の時間が必要ですが、その日のうちに診断し、治療を開始できる利点があります。
ただしこの検査は菌を感知できる感度が低いのが欠点で、体内で菌がさほど増殖していない感染初期の人には適しません。
無症状の場合でも、性的接触からどの程度時間が経っているかによって正しい検査結果が出ないときもあります。
加えて無症状の人は保険適用での検査をするのは不可能で、医療機関でも自費での検査になると理解しておきましょう。
費用を抑えたい場合は保健所で検査を受けるのも可能ですが、匿名性が保持される反面、1日に検査できる人数に限りがあります。
そして保健所の検査が陽性だった場合、適切な診断や検査を受けるには医療機関を受診する必要があります。
性的接触をした相手が淋菌に感染していると判明した場合や、安心のために検査を受けたい人はPCR法で検査するのがよいでしょう。
淋菌検査(PCR法)とは
淋菌検査は、症状に関係なく感染の有無を調べられる検査方法です。
即日検査と異なり判定に時間がかかるのが欠点ですが、菌を検知する感度が高く、発症直後でも淋菌を発見できる利点があります。
しかし感度が高いゆえに菌の死骸を検知して陽性と判定されたり、結果が出るまで数日間は治療を始められなかったりするのが欠点です。
そして無症状の人でも検査が可能なのに加えて、性器以外の咽頭や直腸の感染状況も判定できる万能性を持っています。
ただし淋菌には潜伏期間が2〜7日程度あり、潜伏期間内の検査はPCR法でも誤った判定が出る可能性についても理解しておく必要があります。
さらにPCR法による検査も症状が無い人は保険適用とならず、自費診療となるため迅速検査と同じく費用がかかるのは変わりません。
無料で検査できる保健所を利用する場合も、前述のとおり人数が限られていたり実施可能な性病検査の種類を事前に確認する必要があったりします。
無症状でなるべく早くにPCR法で検査を受けたい人は、利点と欠点をよく確認して検査の実施を検討してください。
自宅で検査を行う場合は利点と欠点を理解するのが大切

病院や保健所で検査を実施したくない人は、郵送検査キットを使用して自宅で検査する選択肢もあります。
ただし検査キットにも利点と欠点があるため、そこを天秤にかけてしっかりと納得してから検査を行う必要があります。
多くの自宅用検査キットでPCR法が採用されており、自宅で採取した検体を検査機関に郵送して感染の有無を調べます。
自宅用検査キットを用いて検査を行う場合の利点は、以下の通りです。
- 好きなタイミングで検体を採取できる
- 匿名性が保持される
- 病院へ行く手間が省ける
上記の利点は性感染症の検査に抵抗がある人だけでなく、仕事などで忙しかったり病院に行くのが手間に感じてしまったりする人にとっても適しています。
しかし自宅用検査キットの使用は、利点があるのと同時に次のような欠点があるのも事実です。
- 医療機関で検査するより費用が高額になる場合がある
- 検査キットの種類を間違えると買い直しが必要
- 検体の採取方法を誤ると正しい検査ができない
- 陽性であった場合は医療機関の受診が必要
特に費用に関するものは症状を自覚している人の場合、医療機関を受診すると保険が適用されて金額が抑えられます。
検査キットの選択や検体の採取方法は商品の購入ページや説明書をよく読んでおくと、検査の間違いを回避できるでしょう。
さらに正しい検査方法を行って陽性となった場合は、オンライン診療あるいは医療機関を直接受診して適切な薬剤を処方してもらってください。
淋病は妊娠への影響が懸念される病気のひとつ

淋病は放置するしないに関わらず、将来的な妊孕生に影響を及ぼす性感染症として知られています。
妊孕生とは、人間が妊娠するために備えている身体の能力や機能のことです。
女性が知らないうちに淋菌やクラミジアに感染し、放置すると骨盤内感染が卵管の閉塞や子宮外妊娠をもたらします。
妊娠自体を難しくする卵管閉塞や卵管の癒着を防ぐには、淋菌の早期治療が必要不可欠です。
淋菌に感染した際の治療法や治療するうえで気をつけたいポイントについて、今のうちから理解しておきましょう。
淋病による卵管炎や卵巣炎が卵管性不妊を招く
淋病によって起こる卵管炎や卵巣炎を放置した結果、身体に起こる影響が子宮外妊娠や卵管性不妊です。
卵巣と卵管は排卵や受精を司る重要な器官で、これらの機能に問題が起こると受精障害や排卵障害が発生します。
特に卵管の閉塞や狭窄は排卵しても受精できなかったり、受精できても受精卵が子宮に移動できず着床できなかったりして妊娠が成立しません。
左右の卵管が完全に閉塞していない場合、受精卵が卵管を通過できず子宮外妊娠となるケースもあります。
両側の卵管が狭窄あるいは閉塞している人は、受精や着床が難しい理由から自然妊娠は不可能と宣告されるケースも少なくありません。
自覚症状がほとんど無く、なかなか妊娠しないと受診した女性の多くが卵管疎通性の検査をきっかけに卵管閉塞や狭窄を診断されています。
卵管の狭窄や閉塞は内服で治るものではなく、手術をするか体外受精や顕微授精といった不妊治療が必要です。
不妊治療には経済的な負担が生じるだけでなく、体外受精や顕微授精を希望した場合は頻回な通院も負担となります。
さらに働く女性は頻繁に仕事を休まなければならないうえに、なかなか妊娠に至らない精神的な負担も発生するでしょう。
そうならないよう定期的な性病検査や、性行為の際の避妊具の装着といった基本的な予防行動を心がけてください。
淋病に感染したままの妊娠は赤ちゃんの健康状態にも影響する
淋病に感染した女性が妊娠した結果、母体から胎児に淋菌が感染する母子感染の問題があります。
母子感染(垂直感染)とは、母親の子宮頸部や膣にいる病原菌が出産時、産道を通過する胎児に感染することです。
淋病の母子感染で発生する懸念点は、感染した赤ちゃんが結膜炎や肺炎などを発症するところにあります。
新生児は心臓や肝臓、肺などの臓器の機能が大人に比べて未熟なだけでなく、感染症に対する抵抗力も弱いため重症化するリスクが上昇します。
淋病は流産や早産の原因にもなり、赤ちゃんが生まれた週数次第では治療が難航するケースがあるのも事実です。
特に呼吸機能が未熟な状態で生まれた34週未満の早産児にとって、淋菌による肺炎は命に関わります。
とはいえ妊娠37週を過ぎてからの出産が決して安全というわけではなく、赤ちゃんの状態次第では全身の集中治療が必要となるでしょう。
肺炎だけでなく、淋菌による結膜炎も赤ちゃんに重大な影響を及ぼします。
淋菌由来の新生児結膜炎を起こす赤ちゃんは多くいますが、結膜炎の程度によっては失明の可能性も否定できません。
このように新生児の淋病は一概に経過が良好であるとは言えず、後遺症を抱えながらの生活も考えられます。
妊娠をきっかけに淋病の感染がわかった場合は抗生剤で治療できますが、確実に胎児への感染を防ぐ保証はないと理解しておくべきでしょう。
そのため赤ちゃんが淋病を予防するには、定期的な性病検査と望まぬ妊娠を避けるのがポイントとなります。
淋菌の治療は抗生剤を適切に使用するのがポイント

淋病をしっかりと治癒させるには、菌に見合った抗生剤の適正使用が大切です。
近年、淋菌は抗生物質に対する耐性を持ちつつあり、抗生剤を使用しても効果が得られない人も増えています。
現時点で淋病に対して保険診療内で使用できる抗生剤は2種類のみとされているため、一回の治療で確実に除菌するのが大切です。
淋病を含むほとんどの性感染症において、以下のポイントを考慮して抗生剤を処方します。
- 適切な薬剤
- 適正量
- 適正な期間
- 適正な投与方法
上記のポイントを守って淋病を治癒させるには、薬剤の選択だけでなく患者さんの協力も必要です。
はじめに適正な薬剤を選択する目的で身体のどの部位に淋菌感染が起きているのか検査をして、使用する薬剤が決定されます。
抗生剤の投与方法は感染場所や身体の状態によって異なる
淋病は感染箇所で症状の出方が異なるため、感染症の状態に合わせた抗生剤投与が必要です。
前述したように保険適用で使用できる抗生剤は2剤のみであり、効果を発揮させるには適正に使用しなければなりません。
炎症が起きている部位ごとに点滴投与や経口投与、点眼といった投与経路も決まっており、大まかな投与日数も決められています。
特に骨盤内炎症性疾患や播種性淋菌感染症などに至ってしまった場合は、患者一人ひとりの状態を判断しながら投与します。
淋病は性器感染や咽頭感染に関係なく、セフトリアキソンやスペクチノマイシンといった抗生剤が第一選択です。
基本的に抗生剤は1日点滴し、投与期間を終えた頃に再び淋菌の感染状況を検査して陰性になったのを確認します。
性感染症の治療は短期間で高い効果を得る必要があるため、飲み薬や点眼薬を使用する際は患者自身の服薬管理も重要です。
医師や薬剤師の指導にしたがい、適切な服薬方法と決められた服薬期間を守ってしっかりと治療を受けましょう。
抗生剤は処方された日数分を飲み切るのが大切

淋病などの細菌感染に対する治療では、処方された抗生剤を日数分しっかり飲み切るのが大切です。
どの治療に用いる抗生剤も処方された分は、症状がない場合でも飲み切らなくてはなりません。
飲み切る必要がある理由は、以下の通りです。
- 菌が抗生剤に対して耐性を持ってしまう
- 菌が完全に体内から排除されず、感染症や炎症をぶり返す
- 菌が体内に残り、他者に感染させる恐れがある
特に淋菌に効果的な抗生剤は限られているため、抗生剤の服用を途中で止めると、菌が耐性を持つきっかけとなります。
さらに菌が身体から排除される前に抗生剤の成分が身体から消えてしまい、再び菌が体内で活発化します。
その結果起こるのが再び活発化した菌が増殖し、他者に感染させたり症状がぶり返したりする現象です。
特に感染症や炎症がぶり返した場合は再び抗生剤を使用した治療が必要となりますが、使用した薬に耐性ができると同じ薬は使えません。
そうすると異なる抗生剤を用いた治療が必要ですが、短期間で抗生剤を変更すると下痢や腹痛などの副作用も招きます。
これは抗生剤の殺菌作用が腸内細菌のバランスを崩すためであり、整腸剤を服用するとコントロールできる症状です。
それにもかかわらず再び処方された抗生剤の服用を止めてしまうと、治療が無意味となってしまいます。
下痢や腹痛程度の副作用で済んでいる人は、淋病の治療を優先して抗生剤の服薬は継続します。
ただし粘液が便に混じるほど重度の下痢や嘔吐、発疹などが出た場合は、アレルギーの可能性もあるため医療機関の受診が必要です。
抗生剤を服用して異常がない場合、症状が消失しても体内から菌が排除されたのを確認できるまでは、抗生剤の服用を継続してください。
そして抗生剤をはじめとする全ての薬は、消化管や粘膜から血液中に成分が吸収されて効果を発揮します。
なかには血液中に溶け込んだ薬の濃度が一定に保たれて、ようやく薬の効果が出るものもあります。
できる限り薬の血中濃度を一定に保って抗菌作用を発揮させるには、決められたタイミングに決まった量を飲むのが大切です。
もし飲み忘れていた場合は、気づいた時点でなるべく早く服用するようにし、処方された分は飲みきるようにしましょう。
淋菌から自分の身体を守るには適切な予防と早期発見が大切

淋病から自分の身体を守るには、感染のリスクをできる限り低くし、定期的な性病検査で早期発見に努めるのが大切です。
感染しても症状を自覚しないケースがある淋病は、治療自体が難航したり後遺症が残ったりするリスクもあります。
気付かぬうちに感染し、気づいた時点で治療できても、数年後に淋菌由来の不妊症が見つかった人も少なくありません。
若い人のなかには自己判断で、陽性のまま放置して重症化する人もいます。
避妊具の装着や定期的な性病検査をし、自分が感染していないかをチェックするのは将来のためにも大切な習慣です。
パートナーが感染していない、特定の相手とだけ関係を持っているという状況に油断せず、自分の身体は自分自身で守りましょう。