女性がクラミジアに感染したとき出現する症状や知っておきたい予防策とは

クラミジアに感染してしまったら?主な症状と予防策

クラミジアは2015年を機に徐々に増加し、現在では10代後半〜30代を中心に患者数が増加している性感染症です。

性器だけでなく咽頭や眼にも感染するクラミジアは、感染に気づかないまま経過すると将来的な不妊の原因になるといわれています。

しかしクラミジア感染症は抗生剤を用いた治療が可能で、早い段階で受診すると後遺症を心配せず完治も可能な病気です。

本記事では女性がクラミジアに感染した場合に自覚する症状や診断の際に実施される検査、治療法予防策について解説していきます。

クラミジアについて正しい知識を備えて適切な対策ができると、見えない感染症から自分の身を守れるようになるでしょう。

本記事で分かること
  • クラミジア感染症とは
  • 感染経路について
  • クラミジアに感染した場合の初期症状
  • クラミジア感染が進行した場合に起こる病態
  • クラミジア感染症の検査と治療
  • 女性がするべき感染予防策
目次

クラミジアは日本で最も感染者数が多い性感染症

日本で最多の性感染症 自覚症状が乏しく感染拡大

クラミジアはクラミジア・トラコマチスという病原菌が膣や喉、直腸などの粘膜に付着して起こる性感染症です。

主に性行為などの接触を通じて病原菌が膣や陰茎などの性器、咽頭、直腸粘膜に付着して感染が成立します。

男女ともに感染しても症状を自覚しないケースが多く、感染に気づかないまま性行為などを通じて感染を広げるのが問題点です。

こうした背景から世界的にもクラミジアに感染する若者が多く、国内でも10代後半〜30代の女性を中心に感染者が増加しています。

女性に感染者が多いのは人口の男女比や、クラミジア感染は自覚症状が乏しいため受診に至らないまま感染を広めているのが主な理由です。

女性がクラミジア感染に気づかず経過すると、将来的に不妊になったり出産を機に自分の子どもに感染させたりするリスクがあります。

ただしクラミジアは気づいた時点で医療機関を受診すると、適切な治療による完治が可能です。

感染は自分だけでなくパートナーの健康にも関わるため、お互いがしっかりとクラミジア感染症について知識を得ておく必要があります。

クラミジアは基本的にパートナーとの接触で感染する

パートナーとの接触が主な原因 感染経路を把握して対策を

クラミジアは主に性器や咽頭、直腸粘膜などに付着した病原菌がキスや性行為を通じてヒトからヒトへ感染します。

クラミジアの基本的な感染経路は、性行為をはじめとする接触感染です。

ごく稀に湯船やトイレといった日常生活のなかで感染するケースもありますが、正常な免疫を持っている人は過度に恐れる必要はありません。

しかし一度の性交渉でクラミジアに感染する確率は最大50%程度と高く、感染を予防するには基本的な感染経路を知っておくのが大切です。

クラミジアの感染リスクは性交渉以外の意外な場所にも潜んでいるため、日頃からしっかりと対策をとっておきましょう。

男女とも感染リスクが高いのは性行為

性器クラミジアに感染した男女の感染経路で最も多いのが、性行為での接触感染です。

性行為の際にすでに関係しているパートナーに対して、性器での接触がない場合でもオーラルセックスやディープキスでも感染します。

性交渉が原因で感染する場合に考えられる経路は、下記の通りです。

性交渉による感染経路
  • 性器同士の接触
  • 性器と咽頭粘膜口腔粘膜の接触
  • 口腔粘膜同士の接触
  • 性器と直腸粘膜肛門部の接触

こうした行為により、パートナーと接触した部分の粘膜からクラミジアが体内に侵入します。

性器同士の接触感染

性器から性器への感染は、男女ともに多い感染経路です。

パートナーの性器にクラミジアがいる場合、避妊具を装着せず相手の性器へ挿入するとクラミジアが自分の性器にも付着します。

ただし性器同士の接触は、避妊具を装着せず挿入した場合のみ起こるものではありません。

性器同士を擦り合わせるだけで感染するケースもあれば、相手の性器に触れた手で自分の性器に触れても感染する場合もあります。

このように挿入を伴わない接触も、間接的な性器間の感染に含まれます。

たとえ感染予防としてコンドームなどの避妊具を装着しても、完璧には予防できないというのも気に留めておいてください。

性器から口腔粘膜への感染

性器同士の接触感染に次いで頻度が高い感染経路は、性器と咽頭粘膜間の感染です。

性器から咽頭粘膜に感染したケースは、オーラルセックスが一般化した10代後半〜30代半ばの感染者に多い傾向があります。

クラミジアに感染している男性器あるいは女性器と舌や口腔粘膜が接触すると、クラミジアは簡単に口腔粘膜に侵入します。

こうしてクラミジアが咽頭などの口腔粘膜に感染した状態が、咽頭クラミジアです。

クラミジアに感染した人の咽頭と感染していない性器が接触した場合、クラミジアは性器にも感染します。

性器間の感染同様に避妊具を利用した予防も可能ですが、完全に感染を防げるわけではありません。

性器と口腔粘膜での感染を防ぐには、オーラルセックスをしないあるいは関係を持つ前にクラミジアが体内にいないか検査しておくのが確実です。

避妊具使用でも完全には防げない あわせて検査が必要

口腔粘膜同士の感染

クラミジアに感染しているパートナーと、ディープキスなどの触れ合いをして起こるのが口腔粘膜を介した感染です。

ただし、口腔粘膜を介した感染はキスなどの接触をしていなくても、相手が口に含んだものを自分の口に入れた場合でも感染します。

感染している相手が使用したコップを自分も使用する場合は、間接的に唇が接触している程度なため感染するリスクは低いです。

しかしパートナーが口に含んだ飴やストローなど、直接口腔粘膜に触れるような食べ物の口移しでも感染する可能性があると認識しておいてください。

性器と直腸粘膜間や肛門部の感染

クラミジア直腸炎に発展 腸炎に似た症状に注意

クラミジアは、感染した相手の性器や直腸あるいは自分の性器や直腸との接触でも感染します。

クラミジアに感染した人との性行為で、肛門部に挿入していない場合でも性器が触れるだけで感染が成立するケースもあります。

相手の膣分泌液や精液などが肛門に触れて、そこからクラミジアが侵入し感染症に発展したのがクラミジア直腸炎です。

クラミジア直腸炎は性感染症ですが、腸炎と似たような下痢や排便時の出血といった症状が現れます。

性感染症になっていると知らず、パートナーや不特定多数の人と関係を持つ人は少なくありません。

近年は風俗店やSNSなどを通じて不特定多数と関係する人もおり、自分が保菌していない場合でも感染予防が必要です。

性行為以外で感染するケースもある

性行為をしていない場合でも、パートナーの体液に触れた手を洗わず自分の目に触れるとクラミジアが眼の粘膜に感染します。

クラミジアが眼の粘膜に感染すると、クラミジア結膜炎と呼ばれる感染症を引き起こします。

人間の眼は鼻や喉とつながっているため、感染が喉や鼻、眼に拡大する恐れがあるのもクラミジア感染症の怖いところです。

手を洗わないだけでなく、傷がある手でクラミジアに感染した人の体液に触れた場合でも感染症に発展します。

このようにクラミジアは、相手とのあらゆるスキンシップで感染する病気です。

性行為の有無に限らず基本的な手洗いうがい、心配な場合は性病に関連した検査の実施をするとよいでしょう。

パートナーがクラミジアに感染していないにも関わらず、自分だけクラミジアに感染するケースもあります。

日常生活での観戦に注意 基本的な手洗いうがいも大切

日常生活でクラミジアに感染するケースは、以下の通りです。

  • トイレや浴槽からの感染
  • タトゥーやピアスの施術を通しての感染

上記のようにクラミジアは性行為に限らず、稀に人と共用するトイレなどの利用で感染するケースもあります。

クラミジアは、数時間程度は水中での生存が可能な病原菌です。

不特定多数の人が一気に感染するような感染力は持たないものの、免疫力が弱い人には感染するリスクがあります。

そのため免疫機能が正常な人は過度に恐れる必要はないのですが、免疫が低下している人は気をつけなければなりません。

ただし正常な免疫機能の人も、タトゥーやピアスホールを開ける施術をする場合は感染予防を徹底している施設で行ってください。

クラミジアに感染した人に対して用いた針を使い回した場合、針に触れた部分から感染します。

未治療での出産は母子感染の原因となる

出産時には母子感染の恐れ 妊娠前に性感染症の検査を

クラミジア感染に気がつかないまま妊娠期を過ごすと、出産時にお腹の赤ちゃんにクラミジアが垂直感染(母子感染)します。

垂直感染(母子感染)とは、妊娠中あるいは出産時に胎盤や産道を通じて病原菌が赤ちゃんに感染することです。

膣や子宮頸部は、出産時に産道として赤ちゃんの通り道の機能を果たしています。

クラミジアに感染したまま出産を迎えた場合、赤ちゃんが産道を通過する際に膣や子宮頸部から赤ちゃんへ病原菌が感染します。

新生児のクラミジア感染症は約20〜50%の赤ちゃんが発症し、新生児肺炎クラミジア眼炎に発展する病気です。

妊娠期にクラミジア感染が判明した際は除菌を行いますが、確実に赤ちゃんに感染しない保証はありません。

妊娠や出産を考えている女性は、赤ちゃんの安全を守るためにも妊娠前にクラミジアなどの性感染症を調べるとよいでしょう。

クラミジアは初期症状がある場合とない場合がある

クラミジア感染は初期段階では無症状の人が多いのに加えて、感染部位で出現する症状が異なります。

クラミジアが感染する場所は、以下の通りです。

  • 性器
  • 咽頭
  • 肛門や直腸

なかでも、おりものなどに変化が起こる性器クラミジアは、日々のセルフチェックが早期発見に有効です。

性器クラミジアを放置すると、子宮内膜炎骨盤内感染などの重篤な疾患に直結します。

そのため、早いうちに発見できるよう、初期症状のポイントを掴みましょう。

早い段階でクラミジアに感染した場合に起こる症状や身体の変化についての知識習得は、感染の拡大や重篤化を防ぐ第一歩です。

感染の拡大と重篤化を防ぐために 初期症状のチェックポイントとは

性器クラミジアの初期症状

性器クラミジアに感染した場合、1〜3週間程度の潜伏期間を経て初期症状が現れます。

感染した女性に起こり得る症状は、以下の通りです。

性器クラミジアの初期症状
  • おりものが増加する
  • 黄色あるいは黄緑色のおりものが出る
  • おりものから悪臭がする
  • 腹痛
  • 性交痛
  • 不正性器出血

上記に示した症状が必ず現れるわけではなく、おりものの場合は変化に気づかないまま過ごしている人もいます。

おりものの変化はセルフチェックで発見できる

おりものは、膣内を適度に潤わせて酸性にして病原菌やウイルスの侵入を阻止する自浄作用を持っています。

クラミジアが体内に侵入して起こる身体の反応に、おりものの増加が挙げられるのはこの仕組みが理由です。

しかし女性のおりものは月経周期で量が多い時期と少ない時期があり、妊娠初期や排卵期でも増加します。

そのためほとんどの女性が、おりものの増加だけでクラミジア感染と判断するのは難しいでしょう。

ただし色調臭いが普段と違う場合は、性器クラミジアに感染している可能性があります。

透明から乳白色をしており、やや酸っぱい臭いを感じるのが正常なおりもののサインです。

しかし細菌やウイルスに感染した場合、身体を防御しようと反応した白血球の死骸がおりものに含まれるため、色や臭いが変わります。

クラミジアに罹った人のおりものは、悪臭に加えて黄色から緑色をしているのが特徴です。

おりものを日頃から観察していると、普段のおりものを把握できる利点があります。

色や粘稠度の確認が難しい場合はおりものシートの活用や、基礎体温で月経周期を観察するとよいでしょう。

ただしおりものシートを長時間利用すると、湿度が高くカンジダなどの雑菌が繁殖する原因となります。

カンジダ感染でもおりものの性状や臭気は変化するため、おりものシートはこまめに交換して陰部を清潔に保ってください。

おりものの状態を要チェック 織物シート等を活用

下腹部痛や出血が出現する

膣から侵入したクラミジアが増殖して骨盤内感染子宮内感染を起こすと、腹痛や性交痛、不正出血が出現します。

こうした症状を自覚する人や無症状の人もおり、痛みや出血の程度も個人差があります。

特に不正性器出血はもともと月経不順がある人にとっては、よくある症状と見過ごすケースもあるでしょう。

腹痛は出現時期によってPMSの症状と勘違いする場合もあり、クラミジア感染と結びつけるのが難しい症状です。

これらの症状は性交痛を含めて女性特有の疾患に多いため、見分けがつかないと感じる事例があります。

そういった場合は月経周期を確認する、あるいは1〜3週間遡っていつもと違う相手と性行為をしていないか振り返ってみてください。

心配な場合は医療機関の受診か、自宅で簡易キットを使った検査が望ましいです。

咽頭クラミジアの初期症状

咽頭クラミジアに感染すると、下記のような症状が現れます。

咽頭クラミジアの初期症状
  • 喉の痛み
  • 喉の腫れや圧迫感
  • 発熱

上記の症状が特定の時期に出現すると、単なる季節性の感染症と勘違いする事例も多いです。

咽頭クラミジアは初期症状が風邪とよく似ており、単なる風邪だと勘違いして内科を受診する人も少なくありません。

感染したばかりの咽頭クラミジアの特徴は、喉の粘膜にクラミジアだと断定できる見た目の変化がない点です。

上気道感染でよく起こる上記の症状と咽頭クラミジアを見分けるには、医療機関での検査が必要となります。

咽頭クラミジアの潜伏期間も、性器クラミジア同様に1〜3週間程度です。

クラミジアを風邪と思い込んで放置すると、扁桃炎を起こしたり肺炎に発展したりする場合もあります。

咽頭クラミジアはキスなどでも感染するため、心配な場合は医療機関を受診してクラミジアに関連する検査を受けるとよいでしょう。

風邪に似た症状も 喉の痛みや発熱にも注意

肛門や直腸に起こるクラミジアの初期症状

肛門や直腸にクラミジアが感染した場合、以下の症状が現れます。

肛門や直腸に起こるクラミジアの初期症状
  • 下痢
  • 肛門周囲の痛み
  • 肛門からの出血

上記の症状は、痔や腸炎に共通した症状です。

胃腸が弱い人や痔を患っている人は、単なる身体の不調と勘違いする人も少なくありません。

特に女性は出産で痔になる人も多く、クラミジアによる出血が単なる痔だと思って放置した結果、肛門から感染したクラミジアが直腸に及びます。

クラミジア直腸炎に発展すると直腸の炎症によって激しい腹痛や下痢血液が混じった粘液便が排泄されます。

それだけでなく炎症が広がった結果生じるのが、骨盤内腹膜炎子宮内膜炎といった各臓器の炎症です。

悪化の程度によっては将来的な不妊腹膜炎による人工肛門の増設など、日常生活でも不便を強いられる恐れがあります。

性行為後1〜3週間あたりで下痢や腹痛などの症状を自覚するなど、感染に関する心当たりがある場合は医療機関を受診してください。

クラミジアは無症状の場合もある

前述したようにクラミジア感染症は、感染部位に関係なく8割の女性が初期症状を自覚していません

感染が考えられるような身体の変化が現れていても、クラミジア感染と思わず治療に至らないケースは多数あります。

クラミジアは放置すると不妊に加えて流産や早産、腹膜炎などの重篤な状態に発展する可能性がある病気です。

無症状だからと放置せず、自分とパートナーが無意識のうちに感染していないか、定期的な検査を心がけてください。

クラミジア感染は放っておくと重篤な病気に発展する

クラミジアの感染に気がつかず放置すると、重篤な病気に発展するケースがあります。

女性の場合は身体の構造上、膣から侵入した病原菌が子宮内や卵管、肝臓の周辺にまで到達する特徴を持ちます。

特に性器クラミジアは膣や子宮内膜炎、子宮頸管炎といった女性器に炎症を起こし、その結果起こるのが卵管閉塞をはじめとする不妊です。

たとえ妊娠できた場合でも流産したり早産になったりする可能性があるため、感染が女性の身体に及ぼす影響を今のうちに知識として備えましょう。

性器クラミジアに気づかず経過すると、下記のような病気に発展します。

  • 子宮頸管炎や内膜炎
  • 卵管炎
  • 骨盤腹膜炎や肝臓周囲炎

性器クラミジアの特徴は、上行感染です。上行感染とは、膣などの入口から侵入した病原菌が身体の上方に向かって感染を広めていく状態のことをいいます。

クラミジアが膣から侵入するとはじめに子宮頸部や子宮内膜で炎症が起こり、そこから卵管や骨盤腹膜へ行き、最終的に肝臓周囲へと炎症が広がっていきます。

放置すると重篤な病気に発展 不妊などにつながる恐れ

子宮頸管炎や内膜炎

子宮頸管や内膜での炎症は、クラミジアに感染してから約1〜3週間後に起こります。

初期症状は、性交痛やおりものの変化など、性器クラミジア感染症状と同様です。

感染初期はおりものの増加にはじまり、次第に炎症が広まって不正性器出血や性交時の痛み、下腹部痛と自覚症状が増えていきます。

病原菌の数が多いほど強い炎症が起こるため、重症の場合は激しい腹痛で病院に搬送されるケースもあり、気をつけるべき病態です。

卵管炎

子宮頸管炎や内膜炎に気づかず治療に至らない場合に起こるのが、卵管炎です。

卵管炎と自覚できる症状は特になくても、知らないうちに卵管が狭くなったり閉塞していたりするケースがあります。

卵管は卵巣と子宮の間を繋ぐ重要な場所で、卵巣で成熟した卵子が排卵を迎えると卵管を通過して精子と受精します。

クラミジアが卵管で炎症を起こすと、卵管にある細胞が障害されて卵管内が狭くなります。

こうして起こるのが子宮外妊娠や受精卵の通過障害ですが、子宮外妊娠は進行すると卵管の破裂を招く危険性がある妊娠です。

子宮外妊娠は状態次第で卵管を残す治療が可能ですが、状態によっては卵管の全摘が必要となる場合もあります。

卵管の閉塞や狭窄が原因で起こる通過障害は将来的な不妊に繋がり、女性の精神面での負担となります。

骨盤腹膜炎や肝周囲炎

卵管炎からさらに感染が広まると、骨盤内にある臓器や肝臓周囲の炎症が起こります。

骨盤腹膜炎を起こすと強い腹痛、肝周囲炎になると右肋骨付近や上腹部に強い痛みを覚えます。

クラミジア感染をしてから1ヶ月以上経過している場合も多く、性感染症とは思えない症状から内科を受診する人が多いのも特徴です。

骨盤腹膜炎や肝周囲炎は、発見した時点で重症化しているケースも少なくありません。

骨盤腹膜炎は腹痛のほかに発熱や悪寒、腹痛による嘔吐や腹膜刺激症状などの典型的な症状が存在するのが特徴です。

骨盤腹膜炎はクラミジアだけが原因で起こる病気ではなく、開腹手術後の感染や出産後に感染する例も存在します。

したがって治療するには原因の特定が必須ですが、それまでに菌が血液中に広まると敗血症、肝臓周囲に広がると肝周囲炎に発展します。

敗血症や肝周囲炎は、的確な治療を行なっても命を落としたり肝硬変になったりする病気です。

以下に示した病気は、原因菌に対する抗生剤の投与と身体の全身状態に応じて必要な薬剤を組み合わせて投与します。

  • 骨盤腹膜炎
  • 肝周囲炎
  • 敗血症

これらの病気はクラミジア以外の原因がいくつもあるため、はじめに原因菌を特定する必要があります。

そこで細菌培養が行われますが、培養検査はすぐに結果が出るわけではなく、根本的に治療できるまで時間が必要です。

すでに敗血症や肝周囲炎を起こしていると、腸閉塞多臓器不全などを起こす原因となります。

このようにクラミジア感染が体内で広がると、治療が複雑化するだけでなく、不妊など将来に関する不安要素も出てきます。

そうならないよう、日頃からクラミジアに感染していないか定期的な検査を受け、性行為の際には避妊具による予防をすると良いでしょう。

クラミジアの検査方法は主に3通りある

クラミジアの主な検査方法は3つ

クラミジア感染を特定するために使う検体は、基本的に尿ぬぐい液血液の3種類です。

尿は男女ともに性器クラミジアを調べる際に有用ですが、女性の場合は一般的に尿ではなく、おりものや膣のぬぐい液を採取して調べます。

ほかにも咽頭クラミジアや直腸クラミジアの場合でも、綿棒を用いてぬぐい液を採取して検査を実施します。

感染が腹膜や肝周囲に及んだ場合は、病状によってぬぐい液を採取しての検査に加えて血液検査が必要です。

クラミジア感染を確認する検査は、主に3通りあります。

クラミジアの検査方法
  • 遺伝子検査(PCR法)
  • 抗原検査(酵素免疫測定法)
  • 抗体検査

これらの検査方法はそれぞれ目的が異なり、何を調べるかによって実施する検査が変わります。

PCR法による遺伝子検査

性行為からさほど日数が経っていないが、パートナーにクラミジア感染が発覚した場合には感度が高いPCR法を実施します。

PCR法はぬぐい液で採取した分泌液や尿から、クラミジアの遺伝子(DNA)を抽出する検査方法です。

PCRは感度が高く病原菌の数が少なくても感染を特定できる反面、病原菌の死骸にも反応する欠点があります。

そのためPCR法を用いた検査では本来陰性であるものの、陽性になる偽陽性という結果が出る可能性が高く、抗原検査も一緒に行うのが一般的です。

酵素免疫測定法による抗原検査

抗原検査は現在クラミジアに感染しているか調べるのが目的で、病原菌の遺伝子ではなく菌自体を検出します。

PCR法に比べると簡易的なため、結果が出るまで時間がかからないのが利点です。

しかしPCR法よりも感度が劣るのと、病原菌が少ない状況では感染しているにも関わらず陰性の結果が出る恐れもあります。

潜伏期間内にある人や感染して間もない人を検査する場合、あるいは治療の効果を確認する検査には適しません。

抗体検査

現在クラミジアに感染しているか、または過去に感染していたかを調べる目的で実施する方法が抗体検査です。

抗体とは身体に侵入した病原菌を排除するために作られたたんぱく質のことで、過去にその病原菌に感染していないと抗体は作られません。

抗体検査は、血液を使用してクラミジアに対する抗体を検知します。

ただし抗体を検知して陽性反応が出たとはいえ、現在も感染しているのか、あるいは過去の感染を示唆する結果なのか区別できないのが欠点です。

さらに検査によっては感度が低く、初期の感染では抗体量がたりず陰性になるケースもあります。

そのため抗体検査は感染初期と疑われる人には実施せず、自分の感染歴を調べたいといった人に対して行うケースがほとんどです。

必要に応じて採血検査や尿検査などを行う

他の病気に発展した場合は様々な検査で全身状態を把握

クラミジア感染が骨盤内腹膜炎や肝周囲炎まで発展した場合は、血液検査を実施して体内の全身状態を把握します。

肝周囲炎や腹膜炎では炎症の程度を調べるためのCRPや白血球数を調べるだけでなく、肝機能や腎機能を調べるのも大切です。

ほかにも肝周囲炎や骨盤内腹膜炎、子宮頸管炎などに至った人には経膣エコー腹部エコー、CT検査などが行われます。

感染初期に発見できたケースでも、妊娠していると治療するにあたって使用できない薬剤があるため、尿検査妊娠していないかどうかも調べます。

尿検査で妊娠に対する陽性反応が出た場合、正常妊娠かどうかの確認に加えて大まかな週数を知る目的でエコー検査が必要です。

高齢者や新生児では年齢や持病が原因で肝機能、腎機能が低下あるいは未熟な例も少なくありません。

クラミジア感染が疑われる高齢者の場合は、治療方針を決定するために血液検査を行います。

このようにクラミジアは診断を目的とした検査のみならず、全身の状態を把握し適切な治療を行う目的で数種類の検査が行われます。

クラミジアは抗生剤の投与で完治できる病気

行製剤の投与で完治可能 医師の指導に従って服用

クラミジア感染症を起こす原因菌のクラミジア・トラコマチスに対し、効果的とされている抗生剤を投与して治療します。

抗生剤の投与は咽頭クラミジア、性器クラミジアなどの感染部位や感染症の状況が異なる場合においても必須です。

ただしどのような経路で抗生剤を投与するかによって、効果が出現するまでの時間は異なります。

効果が出るまで時間がかかる経口投与に比べ、点滴で血液中に薬剤を直接投与する静脈投与は早い段階で効果が現れます。

そのため骨盤腹膜炎や敗血症、肝周囲炎などの早急に治療が必要な重症例には点滴治療を選択するのが一般的です。

それに対して、クラミジア咽頭炎やおりものの性状が変化するといった初期段階では飲み薬の経口投与が選択されます。

投与する抗生剤はマクロライド系やキノロン系、テトラサイクリン系といった種類を感染した人の年齢や体重、妊娠の有無などで使い分けていきます。

処方された薬の種類で1日の服用回数や用量、服薬のタイミングが異なるため、医師や薬剤師の指導に従って正しい方法で服薬してください。

体内で炎症反応が強かったり、腹膜炎を起こしていたりして抗生剤の点滴が必要な場合は、入院が必須です。

稀にクラミジアが眼に付着して眼炎を起こした場合は、抗生剤の点眼を一定期間続けます。

治療の効果を判定するタイミングは、投薬治療を開始してから2週間経過した頃が目安です。

抗原検査が陰性かどうか確認しますが、稀に体内に微量の病原菌が残っているケースでは治療しても再発する場合が少なくありません。

完全に体内から病原菌を排除するために、抗原検査で陰性を確認した後も数日間は医師の判断で一定期間内服を継続する場合もあります。

そして治療を行う際の大切なポイントは、パートナーとの同時治療です。

性交渉で感染頻度が高いクラミジアは本人が感染した場合、ほとんどの症例ではパートナーも感染しています。

カップルのうち一人が感染から回復しても、パートナーから不特定多数に感染を広める恐れもあるため、治療の際はパートナーにも声をかけましょう。

クラミジア感染を防ぐために女性ができる対策とは

クラミジアは免疫の獲得が困難 再発の予防策6つ

クラミジアは免疫の獲得が非常に難しく、一度罹患しても再発する可能性が高い性感染症です。

一度クラミジアに罹患したからとはいえ、二度と感染しないとは限りません。

クラミジアの感染歴に関係なく、どんな人でも日頃からクラミジアに対する予防行動を取っておくのが大切です。

残念ながらクラミジア感染を予防するワクチンは存在しないため、自分自身で感染を予防する必要があります。

クラミジア感染を予防するにあたって有効な手段を、以下にまとめました。

クラミジアの感染予防策
  • 不特定多数の人と関係を持たない
  • 性行為の際にはコンドームなどを着用する
  • 定期的にクラミジアに関連する検査を受ける
  • 不安な行為があった場合は早めに医療機関を受診する
  • パートナーあるいは自分が感染した際は二人で治療を受ける
  • 結婚前にブライダルチェックを実施する

上記に示した予防策でも、不特定多数の人と関係を持たないのはクラミジアの感染予防において重要なポイントです。

クラミジア感染は性行為に及ぶ相手が多いほど感染リスクが高まり、自分が周囲に感染させる可能性も高まります。

そのため、恋人や夫など特定の相手とだけ関係を持つようにしてください。

そして行為の際に避妊具を使用すると、望まない妊娠を回避できるだけでなく、ある程度クラミジアへの感染リスクを軽減させられます。

自分とパートナー双方が感染していないと認識していても、実際に検査をしてみるとどちらかが無症状のうちに感染しているケースも存在します。

確実に予防したい場合は、キスや性行為に及ぶ前にあらかじめパートナーと一緒に性感染症に関する検査を行うのもひとつの方法です。

定期的に性感染症の検査を行うと、クラミジア感染を心配せず結婚や妊娠といったライフイベントを迎えられます。

近年ではオンライン診療や24時間診療に対応したクリニック、家庭でできる抗原検査キットがあるため、活用も検討しましょう。不安な行為があった場合でも早めの受診によって、クラミジアに有効な抗生剤の予防投与が可能です。

不安な行為があった場合でも早めの受診によって、クラミジアに有効な抗生剤の予防投与が可能です。

もしどちらか一方が感染した場合には、感染を拡大させないよう二人で一緒に治療を受けてください。

女性の場合はブライダルチェックなどを活用し、結婚や妊娠前にあらかじめクラミジア感染がないのを確認するのもよいでしょう。

クラミジア感染を防いで健康的な生活を心がけるのが大切

定期検査や日頃の感染対策が重要 予防の習慣化が身体を守る

クラミジア感染症は女性の健康に関係する感染症で、妊娠や出産にも大きな影響を及ぼします。

無症状のまま経過するケースが多いクラミジアは、自分が感染していると気づかずに不特定多数の人に感染を広めるのが怖いところです。

クラミジアは日常のどこにでも潜んでおり、いつ誰がどのように感染するのか分かりません。

自覚症状を感じるケースが少ない感染症だからこそ、定期的な検査避妊具の装着といった日頃の感染対策をしっかり行う必要があります。

自分は大丈夫だと過信せず、日常的にクラミジアをはじめとする性感染症の予防を習慣づけて自分自身の身体をしっかりと守りましょう。

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